CALMな時間

Everything is made from a dream

苦闘を乗り切れ

このブログについての注意事項。


 1.食べられません。(本当に食べれる人を除く)

 2.違う意味で目に入れないでください。

 3.高温多湿を避け、なるべく涼しい所でお読みください。


 ご無沙汰していたね。
 みんなはこの夏、どんな所に行ったりして楽しんでいる~人を見ながら過ごしているんだ?

 そんな暇なかったって人も中にはいるだろう。そんな人に限って「俺は大丈夫」と強がる。


 いくら元気でも、身体だけじゃなく心にも栄養は必要だ。

 医学的根拠じゃなく、単に娯楽が足りていないだけの話。
 これは夏に限った事じゃなくて、好きな所へ行ったりスポーツしたり、あと筋トレしたりするだけでいい刺激になる。


 俺も夏休み中はいろんな所へ行った。中でも海は久々だったぜ。
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 海はいいよな海は。

 休むことはサボる事じゃない。
 自分のコンディションが整ってないと勝てる相手もそうじゃ無くなる。

 ただがむしゃらに頑張っても良い結果にならない時は、そういった意外な事が原因だったりする。
 センスとか運って言葉に逃げないで、先の楽しみや新しい楽しみってのを持ってほしい。

 皆忘れがちだけど、小さい頃っていろんなことを練習するよね?で成功したり上手くいった時に、俺スゲーとか思ったりした。
 そういった気持ちを忘れないように新しいことに取り組めたら面白いよな。

 Your struggle is part of your story.




 だいぶ話変わるけど、自分の過去のブログを読んでたら不意に笑った↓


 なんだこの乱暴なブログは…。




なおちとせ 3話

注意

 この物語にはフレンドリーな描写が含まれています。


3話 新しい道


 「ここまでだな。ナイフを捨てれば命は助けてやる」

「そっちこそナイフをすてろ!」

「わからない奴だな。いいだろう。ソースカツ定食の千切りキャベツみたいにしてやる!」

その瞬間、銃声が部屋全体に響いた。

「くっ、バカな…」

直人はすぐ脇のソファーに倒れた。

「ナイフでたたかうつもりだったのか?」

そう言うと千歳は時計を見て、何かを思い出したかのようにテレビのリモコンのスイッチを押した。

「もう始まってるじゃん」

千歳はテレビのすぐ前に立つと、ソファーに倒れていた直人が起き上がった。

「テレビ近すぎると目悪くすっぞー」

そう言われた千歳は空砲しか撃てないモデルガンを置いてソファーに座った。

千歳が毎週観ている特撮ヒーローの番組を観ている間、直人は朝食をテーブルに運んだ。

「ちとせー、朝ごはん」

千歳はテレビの方を見ながらソファーから椅子へと移った。アニメを観たり戦隊ヒーローを観たりと、千歳にとって朝は忙しいらしい。

「いただきます」

千歳は焼いたばかりのシャケの切り身をパクパク食べた。

「今日のシャケは美味しいか?」

「うん、おーしぃーよぉ」

「骨食うなよ」

「うん」

直人も朝食を食べながら、千歳が観ているテレビの方を見た。

「なぁ、この変身した主人公みたいなのは、何ていうんだ?」

「あれはシーフード仮面っていうの。すっごいおもしろいワザを使うんだよ」

「なるほど…」

ヒーローの格好良さはユーモアの前に敗れたり…か。

「ちとせ。前から思ってたんだが、何でヒーローはトゥーとかソリャーって言うんかな。ヨイショーとか普通は言いそうじゃね?」

「それはちゃんとセリフをかんがえてるからだよ」

「…ごもっともです」

「みて!ひっさつワザ使うよ!」

「ん?」

直人が再びテレビを観ると、魚介類仮面やらが悪そうな怪物の前でポーズをとっていた。

「ああ、ちとせ。この後なんだけど…」

「ほらみて、おもしろいでしょ?」

「この後、俺の新しい仕事の場所に行くんだけどさ」

「病院?」

「そー。今日は挨拶だけになるけど、もう少ししたら行くからな」

「はーい」

朝食を食べ終え、二人は着替えを済ませると、車に乗った。

「ねぇ、かぜひいた時にのむおくすりも病院で作ってるんでしょ?」

「ああ」

「思ったんだけど、なんでも溶かしちゃう液体って何にしまうのかなぁ」

「いや、それ薬じゃないし、科学者じゃないから分からん」

10分もかからないで踏切を渡り、綺麗に舗装された道路が見える所に来た。

「見えてきた」

そこには千歳が東京で見た病院とほぼ同じ大きさの病院があった。直人は広い駐車場の、スタッフ用の場所に車を停めた。

「ちとせ、病院の中は静かにな」

「はいな」

直人は受付で案内を聞こうとすると。

「おはようございます」と受付の人は笑顔で挨拶をし、部屋の案内をした。

指示通り、二人は上の階へと登った。

「おかしいなぁ」

「ん?」

「さっきからスタッフどころか、患者さんともすれ違わない」

「まだあさだから?」

「いや、朝食後だから、誰かしらいるはずなんだけど…」

案内された通り、直人はその部屋の扉を開けた。

「おはようござ…」

「待ってました!」

同時に多くの人の拍手が聞こえる。そこにはこの病院内のスタッフほとんどと患者さん達まで直人と千歳を囲んでいた。

「あの、これは…」

「お帰り、直人くん」

ここの委員長先生であろう人が言った。

「いやー、また会う日が来るなんてね。しかもこの病院で働いてくれるなんて」

「…そうですね」

「あれ、直人くんのお嬢さん?」

「あ、ほら挨拶」

「こんにちは!ちとせです」

「元気だねぇ。ちょっとだけお父さんとお話があるから、えー、その間は…」

「あ、私が見ています」

一人の看護師が前へ出た。

「じゃあ頼むよ」

「おいで、ちとせちゃん」

千歳が看護師についていくのを見届けると、委員長先生は直人を連れて、院内を案内した。

「それにしても、直人くんもちとせちゃんも元気そうでよかったよ。辛い思いをしたままだと、この仕事も手を付けにくくなるからね」

「それで、さっきのを?」

「それもあるけど、若い人がここに来るのは久しぶりだから、ちょっとでも緊張を解いてもらいたいと思ってね」

一通り、病院内を一周すると元の部屋に戻った。

「まだ初日だし、そのうち覚えていくよ」

「ありがとうございます」

「それじゃあ、また明日からよろしく」

「はい、よろしくお願いします」

直人はさっき看護師と千歳が入っていった部屋の扉を開けた。

「ちとせー」

千歳は看護師と本を読んでいた。

「あ、おわったの?」

「おう」

千歳は本を本棚にしまうと、直人の方へ行った。

「すいません、ありがとうございます」

「いいのいいの、ちとせちゃん良い子ね。久し振りに子供の相手ができて良かったわ」

二人はお礼を言うと病院を後にした。

車に乗る前に直人は病院の方に振り返ると「ちとせ、俺はこの病院で生まれたんだよ」と呟くように言った。

「この病院で?」

「ああ、燈と同じこの病院で」

直人は車を走らせた。

「そうだ、明日からまた仕事だから今のうちにいろいろ買いに行くか」

「なおはしごと楽しい?」

「楽しいっていうか、まぁやりがいがあるしな」

「やりがい?」

「うーん、誰かのために良いことができるって事かな」

「なるほどー」

「あ、まだ聞いてなかったけど、ちとせは将来何になりたいんだ?」

「えーっとね…んー…。おしごと?」

「今それを考えてたんじゃないのか?」

「そうだけど…」

「小学生になってからでも、夢なんか選び放題だからなぁ」

「なおはどんなゆめがあったの?」

「え、俺は…俺はまだ探し中かな」

「おとななのに?」

「大人だって夢を持つよ」

「そうなんだー」

「まっ、ゆっくり考えーい。でもその前に学校で勉強しないとな」

「べんきょうって、かんじをおぼえたりけいさんもするんでしょ?」

「そうだな。んだが、その前にちとせの勉強机を買いに行かなきゃな。まだ部屋の家具もあんまり無いんだし」

直人は自宅に車を停めると、また着替えをして外へ出た。

「バラしたとしても、アルファードで机を運ぶのはちょっと厳しいな」

「どうするの?」

「アレを使う…」

「まさか」

「そのまさかだ。ついて来い」

直人は自宅にから徒歩で道へ出た。

「何処へ行くの?」

「ふっふっふー。まだ教えん。着いてからのお楽しみ」

「おたのしみぃ?」

二人は自宅のある集落を出て、辺り一面に広がる田んぼ道を歩いた。

すれ違うトラクターのドライバーや、散歩をしている人達に挨拶を繰り返していた千歳が斜め前に見える磐梯山を指差した。

「あればんだいさん?」

「そーだな」

「おっきいね!」

「おおきいな」

田んぼ道を抜け、上に高速道路が通るトンネルをくぐると、また別の集落へと二人は到着した。

「ここだ」

直人は集落の中では大きめの屋敷が立つ敷地へと入ると、インターホンも鳴らさずにスライド式の広い玄関を開けた。

「ただいまー」

直人はそう言いながら勝手に上がった。

「ここおじいちゃんちでしょ?」

「そう、俺の方のな」

すると和室から直人の父親が顔を出した。

「ああ、直人か」

「ん、今日まで時間あるから少し寄って行くよ」

「あっ、おじいちゃんだ」

「久しぶりだねちとせ。新しいお家はどうだい?」

「うん、でっかいせんぷうきがあったり、すんごくおしゃれ」

「それはよかった」

直人の父は笑顔で和室へ案内した。

「大変だね。来てからもう仕事か」

「ああ…。そうそう、軽トラを借りたいんだ。ちとせの机を買いに行こうと思って」

「いいよ。鍵はいつものとこだし」

「もしかしたら、しばらく借りっぱなしかも知んない」

「あ、それなら、そのままで良いよ」

「え?」

「ちょうど買い換えようと思っててね」

「またかよ。よくそんな余裕あるよな」

その時、直人の母が部屋へ入ってきた。

「やっぱり来てたのね。いらっしゃい、ちとせ」

「こんにちは!」

「ちょっと待ってね。今お茶持ってくるから」

そう言うと、直人の母は冷えた麦茶と菓子を持って戻ってきた。

それから軽く雑談をするつもりが、気がつくと時刻は昼時になっていた。

「お昼食べてく?」

直人の母が言い、そのまま二人は昼飯を食べて行くことになった。

昼飯を食べ終え、直人は千歳を連れて玄関へ向かうと、思い出したかのように振り返った。

「あぁ、そうだ。もしかして円奈の(まどな)机ってまだあるのか?」

「いやもう、結構前に処分しちゃったわよ」

「そうか…。じゃあまたそのうち来る」

軽トラに乗ると、直人はデパートが建ち並ぶ街の方へと車を走らせた。

「なお。コレはなに?」

千歳は車のドアに付いているレバーを指差した。

「ん?ああ、それは窓を開けるやつ」

「まわせばあくの?」

「そう。やってみ」

千歳はレバーをくるくる回して窓を開けてみた。ちょうどその時、外に桜の木が何本か見えた。

「さくらキレイだね!」

「満開だなぁ」

そこから近くの大型家具店の駐車場に車を停めて、中へ入った。

「机とかは2階だな」

エスカレーターで2階へ上がると、ベッドやテレビなどの家具がフロア一面に並んでいた。

「ちとせ。机は奥の…って」

いつの間にか千歳が後ろにいない。いつものお約束だ。

「すっごいふかふか」

千歳はベッドの上座っていた。

「ふかふかじゃなかったら買いたくないな。ほら、机見に行くぞ」

机はシンプルな勉強机からデスク、ベッドとの組み合わせなど豊富な種類があった。

「勉強机はこの辺りだな。どれが良いとかあるか?」

「うーん…。ちょっと考えさせて」

「おう」

千歳は一つ一つの勉強机の椅子に座ったり、引き出しをいじったりした。

「コレいいね」

「おん」

「やっぱりこっち」

「ん」

「あー、たながあるほうがいいかなぁ」

直人が思っていた通り、なかなか決まらない。

「ちとせ、日が暮れるぞ。今日はもう一つ買う物があるからな」

「もうひとつ?」

「ほら、先に机選ばないと。どれで迷ってるんだ?」

「えっと、これと、ベッドとくっついてるのと…」

「ベッド付きか。お前いつの間に一人で寝れるようになったんだ?」

「あっ、やっぱりそれはなし!」

「んー、コレなんかは?棚を組み合わせたりできるし、子供っぽくないから長く使えるんじゃないか?」

直人が一つの勉強机を指差した。

「それいい!」

「単純だな。本当にコレで良いのか?」

直人は近くに店員がいないかと周りを見渡すと、一人の店員と目が合った。その店員は軽く笑うと急ぎ足で直人の方へと駆け寄った。

「お決まりですか?」

普通、いきなりお決まりですか?はないだろうと思いながらも直人は言葉を返した。

「コレをください…。って言おうとしたけど、やっぱりいらないです」

千歳が驚いて直人の顔を見上げる。

「保冷剤ほどじゃないけど、お金が固くなっていてね」

「冷やかしではないけれど、財布の紐は固いとおっしゃってるのですね?」

直人と店員は笑った。

「ああ、この人は高校の時の後輩だよ」

「ちとせです」

「こんにちはちとせちゃん。机を探しているの?」

「うん。えっと、コレください!」

「はーい。今新品をお持ちしますので、そちらにお掛けになってお待ちくださーい」

「ちょ…って、行っちまった」

「かうんだから、いいんじゃないの?」

「買うのは俺なんだけどな」

会計を済ませた直人は、まだ組み立てられていない机が入ったいくつもの大きな箱を軽トラックの荷台に乗せると、また別の店へ車を走らせた。

「どこ行くの?」

「すげー良いものを買いに行く。ちとせが欲しいって思っている物だ」

机を買った店から、そう長い距離は走らず、また大きなある店へと車を停める。

「あ、じてんしゃ!」

その店は大型の自転車専門店だった。

「そっ。これからちとせの自転車を選ぶ」

店内には一般的なカゴ付きの自転車から、スポーツ用など、壁にまで自転車が置かれていた。

「ちとせ、子供用のはこの辺だ」

「うん」

子供用の中でも、細かく種類が分かれていた。千歳は子供用というよりは、少しシンプルなカゴ付き自転車を一台一台見て回っていた。

「この辺が良いかもな」

「うーん…。でもこれ、みんな同じののってそう」

「いや、自転車なんてだいたいそうだろ」

千歳はその斜め先に並べられているマウンテンバイクを見つけると、そっちを見て回った。

「マウンテンバイクが良いのか?」

「なおもこれに似てるののってるよね」

「ああ、そうだな。これだと砂利道とかでも楽に走れるんだぜ」

千歳はマウンテンバイクが気になる様子で、しばらくその辺りを見ていた。それからようやく決まったのか、千歳は直人をチラッと見ると、一台の自転車を指差した。

「これ、このかたちが好き!」

千歳が指差したのは、タイヤの小さい折りたたみ式のマウンテンバイクだった。

「ああ、いいんじゃないか」

「おりたたみしきだって」

「そうだな。これなら車に積んで、出かけ先でも乗れるな。本当にこれでいいか?」

「うん!」

直人は軽トラックの荷台の、さっき買った組み立てられていない机の隣に自転車を積んだ。

「いよいよちとせも自転車デビューか。帰ったら早速練習するか?」

「するする!今日のれるようになるかなぁ?」

「ははは、1日じゃあ難しいなー。でも頑張ればいけるかもな」

車は街を抜け、大きな川を渡る橋へと差し掛かった。橋へ上がる坂道を走らせながら直人が言った。

「ちとせ。この坂の名前、何ていうか知ってるか?」

「え?んー、わかんない」

「急な坂だ」

家へ着くと直人は早速自転車を降ろして、千歳が乗り易いようにサドルの高さを合わせたりした。

「よし、乗ってみ」

千歳は初めて乗る自転車にまたがると、地面に足を付けながらヨロヨロと前へ進んだ。

直人は心の中で「うかつだったあ。補助輪をつけてねぇ!」と戸惑っていたが、何とか支えて練習させようと、片方のハンドルを握った。

「両足で漕いでみろ」

「んー…」

「支えてるから。ほら、早く乗れるようになりたいんだろ?」

千歳はようやく両足を地面から離し、ペダルを漕いだ。

「そうそう。もうちょいスピード出さないと倒れちゃうぞ」

千歳は集中しきっているのか、話を返さなかった。

二人が七五三木家の前に差し掛かると声がした。

「おう直人」

「ああ、京平か」

「お、自転車練習か。最近紗和も乗れるようになったばっかりなんだよ」

その時、庭の奥から紗和が顔を出した。

「ちとせちゃんだ!こんにちはー!」

「噂をすれば」

「もしかして自転車のれんしゅう?」

「そうだよ」

「私がおしえてあげる!いいでしょー?」

は直人と京平を見て言った。

「ほらー。自分が乗れるようになったからって」

「いいじゃんケチ」

「私も紗和ちゃんにおしえてもらいたい!」

直人は軽くショックを受けながらも「じゃあ、お願いしようかな」と千歳を預けた。

「じゃあその間にちとせの机を組み立てるとするかな。俺たち今、ちとせの机を買ってきてさ、組み立てなきゃいけないから、その間、ちとせを見ててもらってもいいか?」

「もちろん、全然」

「んじゃ宜しく」と、七五三木家の庭に案内される千歳を見送ると、直人は家へ帰り、千歳の部屋に机の部品を運んだ。一つ一つ大きな部品から組み立てて、机と言えるくらいの形が出来上がった頃には、窓から夕日が差し込んできていた。

直人は千歳の部屋の窓から外を見ると、千歳達のいる七五三木家の庭が見えた。窓を開けると千歳や紗和の声が聞こえる。その声を聞きながら「後少しか」と続きの組み立てに取り組んだ。

夕日が山と重なり始めた頃、千歳はその日の練習を終えて紗和達と別れると、家へと自転車を押した。

家の前まで来ると、隣の駄菓子屋から制服姿の女子高生が出てきて自転車に乗り、千歳の方に自転車を漕いで来るのが見えた。

「こんにちは!」

千歳が挨拶すると、その女子高生は自転車を止めた。

「ん?見かけない子ね。遠くから来たの?」

「うんん。この家に引っ越して来たの」

千歳は家を指差した。

「へー…。こんな田舎にねぇ」

そこから会話が続かないと思ったのか、千歳は以前、直人に「会話が途切れたら、相手の持っている物や服とかを褒めてみるのがいい」と言われていたのを思い出した。

「そのじてんしゃ、カッコいいですね」

女子高生はきょとんとした顔をする。

「いや、これ普通のママチャリなんだけど…。あんたの自転車の方がカッコいいじゃん」

「ありがとうございます!でもまだれんしゅう中なの」

千歳は家のガレージに自転車を押しながら「またねー」と片手を振った。

家へ入るなり「ただいまー!」と声を上げる千歳を見届けると、女子高生はまた自転車を漕いだ。

二階へ上がり、千歳は自分の部屋の扉を開けた。

「おーちとせ。乗れるようになったか?」

「まだむずかしかった。けど少しは乗れるようになったよ」

「さすがだな」

直人は最後のネジを固く締めた。

「おぉー」

「シンプルな設計で助かったよ。ほら、座ってみ」

ちとせは椅子に座ると、両手を机の上に広げた。

「大きい!木のにおいがする」

「新品だからなー。よし、夕飯にしようか」

直人は最近、凝った料理をしようと様々なレシピを試していた。

この日はパスタを茹でながら、千歳のリクエストであるサラダを作っていた。直人が野菜を切っていると千歳が寄って来た。

「わー、じょうず」

「いや、今まで何回夕飯作ったと思ってんだよ」

「どこでりょうりをおぼえたの?お母さん?」

「んー、でも高校の頃にレストランの厨房でバイトしてたから、そこで色々と教わったのが最初かな」

「プロにおしえてもらったの?」

「…まぁ、プロだったな」

「おぉ」

直人が少し大きめの皿にサラダを盛り付けると、千歳がテーブルへ運んだ。

「ししょう!わたしにもりょうりをおしえてください」

「うむ、弟子は取らないよ」

「えー…」

「もうちょい大きくなったら、簡単なのから教えるから」

「ほんとに?」

「ああ」

茹で上がったパスタを皿に移していると、料理とは別の香りが直人の鼻をくすぐった。直人にとってその香りは懐かしく思え、そっと隣を向いた。

誰もいないその空間に向かって「燈?」と小さく呟いた。

それから数秒の間、手が止まったままだったからなのか、千歳が「どうしたの?」と呼びかけた。

「ん?いや、何でもないよ」と直人は夕飯をテーブルの上に並べた。

「いただきます!」と元気に言った千歳は、小皿にサラダをよそった。

「来週からちとせも小学生か」

「がっこうって、とおいの?」

「まあまあかな。でも入学式は一緒に行くし、 紗和ちゃんと一緒に登校するだろ?」

食べながら千歳は、直人がトマトを避けながら食べている事に気がついた。

「トマトきらいなの?」

「いやまぁ…。そうだな」

「トマトはリコピンがいっぱいはいってるんだよ。たべないとダメ」

「…ごめんなさいさい埼玉県」

いったい、俺がちとせを育ててるのか、俺がちとせに育てられてんだかと思いながら直人はトマトを食べた。


Thank you for reading.


つづく





なおちとせ 2話

このブログについての注意事項。


 1.食べられません。

 2.違う意味で目に入れないでください。

 3.高温多湿を避け、なるべく涼しい所で読んでも変わりません。


二話 見えない贈り物


朝、何やら外から音楽が聞こえてくるのに気がついた千歳は目を覚ました。

「なおー」

直人は千歳の声を聞くと、ゆっくりと起き上がった。

「ん…。ちとせ、もう起きてんのか」

「外からなにかきこえる」

「あぁ。これか」

その音楽は直人にも聞こえていた。

「この集落は朝になると、辺りに設置されてるスピーカーから音楽が鳴るんだよ」

「ふぇー…。朝だけ?」

「いや、朝と昼と夕方と…夜も鳴るな。計4回ってとこだ」

「夜もなるんだ…。早くお家に帰りなさいっていみ?」

「早く寝なさいって意味だろ。俺らが昨日着いたのは夜遅かったから、聴けなかったけど」

「まえの家は夕方になるときこえてたよね?」

「ああ、そうだったな。でもこっちは4回とも違う音楽なんだよ」

「田舎って、こまかいね」

「まぁ…田舎だからって訳じゃないと思うけど」

直人は夜中の出来事を思い出したが、あれは夢だったのか?とそれほど気にはしていなかった。

二人は洗面所で顔を洗い着替えると、昨日買った朝ご飯を食べることにした。

「たって食べるの、おぎょうぎわるいんだよ?」

「椅子もテーブルもまだ届いてないんだし。…和室で座って食うか」

直人は障子戸を開け、和室に光を取り込んだ。

「いただきます!」と朝日に照らされた千歳がパンにかぶりつく様子を見ながら、直人も朝ご飯を食べた。

「さて、引越し屋が来る前に掃除すっか」

「うん!」

直人は車に積んでいた掃除機や雑巾などの掃除用具を持ってきた。

「二階はまだ見てないだろ?これからちとせには、二階の掃除を任せまーす」

「ラジャー!」

千歳はビシッと敬礼をすると、湿った雑巾を持って階段を駆け上がった。二階に着くと、早速吹き抜けのリビングを見下ろした。

「どうだーちとせ。二階からの景色はー?」

「なおがちっちゃくみえる!」

「そこまで高く無いだろ…。あんまり乗り出すと、落っこちんぞー!」

千歳は後ろを振り返ると、階段側とその隣の左右2つの部屋があることに気づいた。

もしかすると、どちらかが自分の部屋になるのかと期待を寄せながら、千歳は一生懸命に掃除をした。

それから数分程経ち、直人が二階へと上って来た。

「どうだー。終わったか?」

「あっ、なお。このへやって?」

「お前の部屋だ…。と言いたいとこだが、二部屋ある。ちとせが選んで良いぞ」

「えっ?わたしが?んー…」

真剣に悩んだ千歳はあまり時間をかけずに決断した。

「こっち!」

千歳が指を指したのは、階段から奥側の部屋だった。

「お、そっちにするのか。今すぐ決めなくても良いんだぞ?」

「だって早くきめないと人生がもったいないし」

「そうか…。で、何でそっちにするんだ?」

「うん。まどが多いから」

「なるほど。単純だな。」

直人はもう片方の部屋の扉を開けた。

「じゃあ俺はこっちの部屋な。隅々まで綺麗にしたか?」

「んー、きれいだったり、きれいじゃなかったり」

「じゃあ、手伝うよ」

二人は残りの掃除を終わらせると、和室の畳に横になった。

「やっと終わったー」

「たぁー」

すると、何かを思い出したように直人が立ち上がった。

「ちょっと待ってろ」

直人は昨日荷物を置いたリビングに戻ると、なにやら丁寧に包まれた物を持って来た。

「おかあさん?」

「そっ」

直人が取り出したのは額縁に入れられた燈の写真だった。それを和室の天井に近い壁の隙間にはめ込み、固定した。

「これで、いつでもちとせの成長を見ててくれるぞ」

ちょうどその時、外でトラックが停まる音がして、家のインターホンが鳴った。

「おっ、来た来た」

数人の引越し屋がテレビや冷蔵庫、テーブルや椅子などを次々に運び入れた。

手際よく、あっという間に全ての家具を運び終えると「ありがとうございましたー」と引越し屋は引き上げていった。

「お疲れ様です」

「おつかれさまー」

二人はトラックを見送ると、昼まで集落の中を散歩する事にした。

「わぁー」

外へ出ると、千歳はまっすぐと空に向けて手を伸ばした。

「くもに手がとどきそう!」

雲の間から見える日差しが眩しい。

「ああ、前住んでたとこよりも標高が高いからなぁ」

「ひょうこう?」

「どれだけ空に近いかって意味だ」

「ねぇ!あれ見て」

「話を聞け」

千歳が指を指したのは、家から細い道路を挟んだ隣にある駄菓子屋だった。

「ちょっとだけ見てっていい?」

「おん」

その駄菓子屋は時が止まっているのかのように、昔から変わらないままの様子だった。唯一、直人が見て変わっていたところは、奥に座っているここの老夫婦だった。

「あら、いらっしゃい」

駄菓子屋のおばあさんがゆっくり立ち上がる。

「お久しぶりです」

「まあぁ!久しぶりじゃない。…えーっと名前は…」

「直人です。このやり取りももう100回目くらいですね」

「ばあさん、直人君だよ」

「いゃーねぇ。ジョークよ…。あら、その子は?」

「あぁ、娘です。ほら挨拶」

「こんにちは!ちとせです」

「あらぁ、元気な子ね!いくつになるの?」

「えっと、6さい」

「あんた聞いた?6歳だって!直人君が初めてこの店に来た時とおんなじよ」

「そうでしたっけ?」

「そーよ。若いのに忘れちゃったの?」

「いやぁ…」

「見た目もぜんぜん変わんないんだから。まだ大学生って言われるでしょ?」

駄菓子屋のおばあさんと直人のやり取りを聞きながら、千歳は周りの駄菓子に興味を惹かれていた。

「ちとせ。どれか欲しいのか?」

「これってどんな味がするの?」

「あぁ、ほとんど前住んでた所では見なかったもんばかりだからな。どれか好きなの選んでいいぞ」

千歳は2つほど選んだ駄菓子を買って貰い、駄菓子屋夫婦に軽く手を振りながら店を後にした。

二人が歩き始めると、すぐ先の家の敷地に軽自動車が入って行くのが見えた。

「あれって…」

「どうしたの?」

「いや、ちょっと付いて来てくれ」

直人はその家に近づいて、車から降りてくる人を見た。その人物も直人に気づくと、近寄って来た。

「あぁ、やっぱり。さっき車から見えたんだよ」

「久しぶりだな。享平(きょうへい)」

「直人…大変だったな」

「まぁな…。でも、こいつと二人でなんとかやってるし」

直人は千歳の頭を撫でた。

「あっ、ちとせちゃん。久しぶり」

千歳は何も言わず、直人の顔を見上げた。

「ほら、この前話した俺の知り合いだ」

「こんにちは!」

「こんちは。いやー、最後に会ったのは赤ん坊の頃だったもんね。七五三木(しめぎ)享平…。覚えてないかぁ」

「お前、軽自動車買ったんだ」

「いや、これは嫁のだよ」

そう言うと「そうだ。ちとせちゃん、ちょっと待っててね」と享平は自宅へ入っていった。

少し待つと、享平は背丈がちょうど千歳と同じくらいの子と出てきた。

「ほら、この子がちとせちゃん」

「こんにちは」

その子は軽く頭を挨拶をした。

「娘の紗和(さわ)」

「ねぇ、ちとせちゃんはなんさい?」

「ろくさい」

「おんなじだ!」

紗和は千歳に近づくと「ねぇ、ちとせちゃんのお兄さんってなんさい?」と尋ねた。

千歳は笑いながら「なおはわたしのおとうさんだよ」と答えると、紗和は驚いた顔で直人を見た。

「ちとせと仲良くしてあげてね」

「うん!」

「あれ、でも何でお前、こっちの集落に住んでんの?実家暮らしじゃあ…」

直人が尋ねた。

「ほんとは遠くに引っ越す予定だったんだけどねぇ。結局近くの集落に家を建てたんだ。地元愛ってやつ」

「なんだそりゃ」

「それはそうと、直人もなぜにここに?」

「いやぁ、すぐそこに越して来たんだよ」

「マジか!またどうして?」

「まぁなんつーか、俺と燈が育ったとこで、こいつを育てたいって思ったんだよ」

「なんだそりゃ」

「まぁ、仕事もすぐそこの病院に移る事になったし。明日挨拶に行くんだけど」

「へー、大変だなぁ。ま、いつでも遊びに来いよ」

「おん。奥さんに宜しくな」

「おお。また」

直人が再び歩き出すと、千歳と紗和は手を振って別れた。

「もうこっちでも友達ができたな」

「うん!」

少し歩いた集落の端の方には石段があり、それを登ると公園があった。

「いやー、久しぶりだな」

「前にいたところの公園より遊びどうぐがある!」

「そうだな。昔と変わんない」

公園を囲むように立っている巨大な木々を見ながら、懐かしさに浸っていると千歳が言った。

「ねぇ、この字はなんていうの?」

千歳はボロボロの小さな看板を指差した。そこには『ポイ捨ては恥』と書いてある。

「ポイすてははじって書いてあるんだ」

「"はじ"ってなに?」

「恥ってのは、はずかしいってこと。ポイ捨てはカッコ悪いし、見っともないだろ?」

「でも前すんでたところは、いろんな道にゴミが落ちてたよ?向こうは、"はじ"なのかなぁ」

「うーん。人が多い所は、見っともないことをする人も多くなっちゃうんだろうな」

「人が多いと"はじ"もおおいの?」

「まぁ、皆んながルールを守れば良いだけの話なんだけどな。でもやっぱ、人が多い所は、難しいのかもね…。さっ、そろそろ戻るか」

二人は元来た道から少し外れた別の道から家へと向かった。その道は直人がしばらく見なかった内にモダンな感じの新築が建ち並び、懐かしさから新鮮さを直人に与えた。

「きれいな家がいっぱいあるね」

「こんな田舎の集落なのに、結構新築が建つもんなんだな」

「しゅうらくって、何人くらいいるの?」

「さぁーどうだろ?さすがに百人も居るのかなぁ」

「ここの名前ってなに州なの?」

「何州?あぁ、九州とかの事?」

「わたし当てるね!うーん、ケンタッキー州?」

「なんだそりゃ。福島県ケンタッキー州って名前だったら大変だろ」

「えぇ…」

「残念がるなよ。州はもっと広い所を指す言葉なんだよ」

そんな話をしている内に家の前まで帰って来た。

「そうだちとせ。ちょっと付いて来てごらん」

直人は家の敷地をぐるりと回り、庭を通過して裏へと千歳を案内した。木々が立ち並ぶその先は小さな山の様に短い坂があり、そこにはある建物があった。

「神社だ!」

千歳は鳥居の前に立つと「さっきとおった道だ!」と指を指した。

「景色良いだろ?」

やはりそこ場所も直人が小さい頃によく来た所だった。

気づけば「よく享平達とここで変な遊びを思いついては、はしゃぎ回っていたなぁ」と直人は落書きだらけの思い出の蓋を開けていた。

「なおー、おなか空いたぁ」

「ん?あぁ、そうだな。買い物がてら、昼でも食いに行くか」

「さんせー」

家の前へ戻ると、すぐ近くを紗和が自転車で通りかかった。

「あれって紗和ちゃんだよな。もう自転車に乗ってるよ」

「わたしは…まだのれないよね」

「そだな。でもこれからは自転車に乗れないと不便だぞ。友達できて、どこか遊び行くのも大変だからな」

「でもすっごいれんしゅうするんでしょ?」

「そりゃなぁ。でもいつまでもそんな事言ってたらずっと乗れないままだぞ」

「うん…」

「まぁ、自転車はまた考えとくよ」

直人は家の戸締りをして、財布と車のキーが入ったボディバッグ取ってくると、千歳を乗せて車を走らせた。

「しゅっぱーつ!」と千歳が元気良く言った瞬間だ。

「あっ、ガソリンがもう無いや。すまん、先にスタンド寄っていいか?昨日、あれだけ走ったし」

「いいけど、10びょうだけ」

「えー」

直人は車を走らせ、スタンドに入ると、スタッフが車の横まで走って来た。

「いらっしゃいませー!」

「レギュラー満タン」

そう言うとスタッフは真っ白な窓拭きを渡してきて「よければ、こちらで車内を拭いてください」と言った。

「どうもー」と直人は車内のフロントウィンドウを拭いて、スタッフに窓拭きを返した。

「ねぇなおー。こっちは人がいるの?」

「ああ。向こうはセルフだったもんな」

「いなかって、やさしいね!」

「うーん?そうだな」

ガソリンを入れ終えると、直人は街の方へと車を向かわせた。

「お昼。何がいい?」

「んーん。なにがいいかなあ」

「もう少し行くと、すんごい美味しいラーメン屋があるんだけど、そこはどう?」

「そこにする!」

「決まりだな」

着いたその店はちょうど昼時でもあって、二組ほど待ってからようやく席へと案内された。二人が注文をしてから、あまり待たされずにラーメンが運ばれて来た。

二人は「いただきます」とラーメンをすすった。

「相変わらず旨い」

「あいかわらず!」

「お前は初めてだろ」

「え?わたしもラーメンたべたことあるよ?」

「いや、ラーメンもいろいろ種類があってな」

「はなしながら食べるのおぎょうぎわるいんだよ?」

「な?…すいません」

二人はラーメンを食べ終わり、車へと戻った。

「ラーメン、ラーメン、ほっめるとのびーる、ラぁーメン!」

「頼むからシートベルトしてくれ。ラーメンが褒めて伸びたら怖いわ」

数分もしない内に、大きなデパートや電気屋といった風景に包まれた。

「え!?ここホントに田舎なの?」

「だろ?こっちも買い物できるとこなんて、たくさんあるんだぜ」

直人は大きな建物が建ち並ぶ中でも、何度か来たことのあるデパートの立体駐車場へと車を停めた。

「そうだ。もうすぐ小学生だし、先にちとせの服見るか?」

「そうする!」

デパートに入り、洋服売り場を見つけた千歳はテクテクと一人で歩き始めた。

「ぬおぃ!ちとせ!」

「ん?」

「一人で行くなよ。迷子になるだろ」

「そうだった。ごめんね」

「えっと、子供用の服売り場は…。こっちか」

あちこちで親子が服選びをしている中、二人も千歳の服を選び始めた。

「ちとせ。これはどうだ?」

「えー、もっとお姉さんっぽいのがいい」

やっぱ、この年になるとそう言うものなのかと直人は思った。

「どれか気に入ったのあったか?」

「これ!これがいい」

「んー。ちとせ、今着ている服って、サイズ何だ?」

「サイズ?しらないよ」

直人は以前、燈が千歳の服を選んでいる時のことを思い出した。

「ちとせ、後ろ向いてみ」

直人はその服を千歳の背中に合わせてみた。

「大体こんなもんかな」

「だいたいそんなかんじー」

何着かの服を選び、直人はレジで会計を済ませた。

「あれ?」

今まで隣にいた千歳がいない。

直人が探すと、千歳はすぐ横のゲーム売り場にいた。

「ちとせー。俺の話聞いてたか?」

「このゲーム、CMでみたよね!」

「絶対聞いてないだろ」

直人は、なんで俺がこんなベタな展開に巻き込まれんだと思うのと同時に、燈はいつもこんな苦労をしていたんだなと思わされた。

「俺もゲーム好きだけど、ゲームより遊べる物なんかいっぱいあるぞ」

「同じ遊びなのに、じゅんばんなんてあるの?」

「…ん、んー。まぁ、もっと面白い物なんてたくさんあるし、必要ないだろう?」

「ひつようないものって、何のためにあるのかなぁ?」

そうだよな。俺も小さい頃、そんな事を言っていたよ。周りにはもっと面白い物なんて山程あったのに、何でいつの間にかゲームにハマってたんだろうな。

「はぁ、どれが欲しいんだ?」

「え?わたしほしいなんて言ってないよ」

「は?」

「ん?」

「そうか…。じゃ行くか」

「なおが欲しいゲームあったの?」

「…。そうだ、そういう事にしておけ」

ゲーム売り場を後にし、食品売り場へ続くエスカレーターへと向かう途中だ。

「ねぇ、なお。これ見て」

「ああ、こんなとこにも赤ベコ売ってんだな」

そこには、棚の上に小さい赤ベコから少し大きい赤ベコまでサイズ別に並んでいた。

「なぁちとせ。赤ベコって首が動くのを知ってるか?」

「え?うごくの?」

「見ててみ」

直人は端に置いてある少し大きめの赤ベコの首を上から軽く触った。

「ホントだ!おもしろーい」

千歳が首を縦にカクカク動かす赤ベコを見つめている横で、直人は赤ベコに顔を近づけて自分の首を縦に振った。

「ふーん。そうかそうか」

「なにしてるの?」

「いや、今こいつの言葉を聞いていたんだよ。首を振るだけが脳じゃ無いってさ」

「…なにいってるの?」

そう言うと千歳はまた後ろを向いて歩き始めた。

それから二人は食品売り場で買い物を済ませ、帰ることにした。

帰り道、千歳は急に思い出したかのように言った。

「ねぇなお。きのうね、ランドセル買うって話したのおぼえてる?」

「ああ。…ランドセルだろ?覚えてるよ」

なぜ直人が今日まで千歳のランドセルを買っていないのかは、ある迷いがあったからだ。

それはもう何年も前の事。

「もしも将来、女の子が産まれたらの話になるけどね。私のランドセルを使ってほしいなーって思ってるんだ」と燈が言っていたのを直人は今でも覚えている。燈は小学生当時、ランドセルをとても大切に扱っていて、直人が燈の両親の家を訪ねた時にも、そのランドセルを見せびらかしていた。

千歳には話したことが無いが、その傷一つ無い新品のような赤いランドセルを、千歳が小学生になる時に渡して驚かせようと燈は計画していたのだ。

しかし直人には、それを実行したいと思うと同時にある不安があった。

信号で車を停止させると、直人は軽く目を閉じた。

「ん?」

目を開けると、そこは車内ではなく、見覚えのある景色が広がっている。

「やぁ、久し振りに来たね」

いつぞやと同じ様に、まだ小さかった頃の直人が分かれ道の真ん中に立っていた。

「燈のランドセルを、ちとせに渡すか渡さまいか…か」

「またお前か。今度は何だってんだ?」

「そのランドセル。ちとせは本当に嬉しいと思う?」

「何言ってんだよ」

「そのランドセルを毎日背負って学校へ行くちとせの気持を想像してごらん?」

「何が言いたい?」

「燈が大切にしていたランドセル。自分も大切に、傷を付けないようにとプレッシャーになると思わないかな?それかもしかすると、最新のランドセルが本当は欲しいと思っているかもしれないよ」

直人はため息を一つついた。

「そうだな。それが俺の不安なんだよな…」

「そんなに時間なんかかける必要ないんじゃないかな。先に相談するのが一番早いと思うよ?もし燈のランドセルを受け取っても、気を遣わないといけないなら、ちとせは嬉しくないよね」

そう言われた瞬間。直人は自分の意思を固めた。

「燈の気持かちとせの気持。さて、どっちを優先する?」

「愚問しか言えないのか?それを決めるのは俺じゃ無い」

「はい?」

「お前の言う通り、ランドセルを貰うちとせ本人に相談するべきなんだよ。けど、そのランドセルを見せてからでも、遅くはないだろ?」

小さい頃の直人は左手を軽く上げ「お好きにどうぞ」と言った。

直人がその道を進むと、いつの間にか周りの景色は信号待ちをしている車内に変わっていた。おそらく、今の出来事は一瞬の間だったのだと直人は確信した。

「何でまた、こんな事で悩むんだろうな」

そう小さく呟き、燈の実家へ車を走らせた。

「ちとせ。ランドセルなんだけどさ、今すぐじゃないでもいいか?ちょっとおじいちゃん家に寄りたいんだけど」

「うん。おじいちゃんってお家をくれたほうの?」

「いや、お母さんの方のおじいちゃん家だ」

「そういえばわたしのおじいちゃんって二人いるよね。おじいちゃんが三人とかの人もいるの?」

「三人もいたら、どれが誰だか面倒になるな」

燈の実家へ着き、直人は横開きの玄関を開けると「ごめんくださーい」と言った。

「あらー、直人くん、ちとせちゃんもいらっしゃい」

奥から燈の母が出迎えた。

「すみません突然お邪魔して。これ、つまらない物ですが」と直人は以前住んでいた所で買った菓子箱を差し出した。

「あらー、ありがとう。どうぞ上がってって」と二人は客室へ案内された。

「本当に何から何まで、いろいろとありがとうございました」

「いえ、俺もそんな、大したことは…」

すると廊下から燈の父が顔を出した。

「おや、直人くんじゃないか」

「お邪魔してます。すみせん突然で」

「あっ、おじいちゃんだ」

「おお、ちとせ!辛い思いをさせたなぁ」

「おじいちゃん。わたしね…」と千歳は燈の父と客室から出て、話を始めた。その間、直人は燈の母に用件を伝えた。

「そう…。燈がねぇ」

直人から話を聞いた燈の母は湯飲みに注いだお茶を差し出した。

「ですので、燈の大切な物ですから相談をしてからと思いまして伺いました」

直人が湯飲みに手を付けた瞬間、燈の母は静かに立ち上がった。

「ちょっと待っててくださいね」

そう言って客室から出て行くと、ランドセルが入っているであろう段ボール箱を持って戻って来た。

「私からも、是非ちとせちゃんに使ってほしいの」

燈の母は、段ボール箱の蓋を開けてランドセルを優しく撫でた。

「本当にありがとうございます」

「引っ越して来たばかりなのに、顔を見せてくれてありがとうね」

直人は燈のランドセルを受け取ると、しばらくの間、どこか寂しい眼差しでそのランドセルを見つめた。

「すみません。ちとせには帰ってから渡します」

そう言って直人はランドセルを再び段ボール箱へ入れると、またお礼を言い、千歳を連れて家へと帰宅した。

「なおー。今日の夕飯はなにー?」

「今日はなぁ…。今日は、できてからのお楽しみ」

「おたのしみかー」

千歳はリビングをウロウロしながら急にハッとなった。

「あ!ランドセル買ってなかった!ねぇなおー」

直人は冷蔵庫にしまう食品を入れ終えると、何も言わずに玄関に置いていた段ボールを持ってきた。

「ちとせ…」と直人が言いかけた瞬間だ。

「それランドセル!?」

千歳は念願のランドセルが目の前にあるのだと勘付き、目を輝かせた。

「ああ。けどな、これはお母さんからの物だ。ちゃんと小学校6年間、大事に使えるか?」

千歳は大きく頷くと「だいじにつかう!」と言ってランドセルを受け取った。

「お母さん。いつのまに買ったんだろうね」

そう千歳が言った時、気遣ってしまう事を覚悟しながらも直人は答えた。

「そのランドセルはな…お母さんが小学生の時に使っていたんだ」

千歳の動きが止まる。

「お母さんが?」

「ああ。…お母さんさ、ちとせにこのランドセルを使って欲しいって…それで…」

じっと手に持ったランドセルを見つめていた千歳は、目に涙を浮かべた。

分かっていたつもりだった。千歳に笑ってほしいと言ったあの日から、千歳の笑顔の裏にはずっと悲しみを隠していたんだ。いつ溢れてもおかしくない悲しみを。

だから笑って過ごせるのも限界がある。それは千歳の瞳の奥に、ずっと燈が映っている証拠だ。

たまには思い切り泣いたっていい。そう直人が言おうとした時だ。

千歳は不意に顔を上げて直人に笑顔を見せた。

笑っているのか泣いているのか、おそらく千歳自身も分からないくらい…。そんな顔だった。

「やっぱりそうなんだ」

「え?」

「だって、お母さんのにおいがするから」

千歳はスッと立ち上がると、ランドセルを背負った。あの日から、ずっと見ることができなかったくらいの笑顔で。

「しんぴんみたいだね!」

渡せて良かった。千歳の笑顔は直人にそう思わせた。

直人は壁に掛けてある燈の写真を見ながら心の中で言った。

「見てるか燈。千歳はしっかり笑っているよ」


—Thank you for reading.



つづく

なおちとせ 1話

このブログについての注意事項。


 1.食べられません。

 2.違う意味で目に入れないでください。

 3.高温多湿を避け、なるべく涼しい所で読んでも変わりません。


一話 春の燈


それは、ちょうど桜が咲き始めた頃だった。

直人(なおと)はその日の夕方、妻の燈(あかり)が入院している病院から連絡を受け、仕事場からその病院へと向かっていた。

直人が燈の入院している病室に入ると、燈と娘の千歳(ちとせ)が笑いながら会話をしていた。

「あっ、なお」

「なお遅い!」

「ごめんあかり。大丈夫なのか?」

「うん。さっき息苦しくなって…。今は大丈夫」

「そうか」

「仕事中だったのにごめんね…」

「いや、もう終わる時間だったから大丈夫だよ」

そこまで走って来た直人は呼吸を整えながら燈の寝ているベッドの隣にある椅子に座った。

燈は以前から病にかかり、医師から余命を宣告されたほど深刻な状況だった。直人は覚悟していたが、そのいつ消えるかわからない命の灯火を絶やさないでほしいと、ただ願う事しか出来なかった。

「なおが治してあげることはできないの?」

千歳が聞いてきた。

「俺は別の病院で働いているし、病院の先生って訳じゃないからな。治してあげたいけど」

「ほらまた。ちとせ、なおって呼ぶの変よ」

「えー、お母さんだってそう呼んでるじゃん」

「ちとせは来月から小学生でしょ?みんなお父さんを名前でなんて呼ばないわよ」

「まぁ、そんなすぐ変わんないよ。今までずっとそう呼んでたんだから」

それからいつもの様に三人の会話は長い時間続き、外が暗くなった頃にようやく時計を見ると、遅い時間になっていた。

「もうこんな時間か。とりあえず、また明日来るよ」

「えー、もう帰るの?」

「ちとせは晩飯食わないのか?」

「たべるけど…」

「ねぇ、ちとせ」

燈が両手を広げて呼ぶと、千歳はベッドに上がり燈を抱きしめて「早く元気になってね」と言った。

直人と千歳が病室を後にしようとすると燈が声をかけた。

「なお…」

「ん?」

「笑って」

 直人は「心配するな」と言って燈に変顔を見せると病室を後にした。その顔を見て、燈は笑いながら軽く手を振って2人を見送った。

それが今日までの間に、燈が見せた二人への最後の笑顔だった。

二人は病室を後にし、自販機やベンチの並ぶフロアに立ち寄った。

「ちとせ。何か飲むか?」

「うん」

直人は自販機で千歳に飲み物を買ってあげ、テレビモニターが近くにあるベンチに腰をかけた。

隣で缶ジュースを飲んでいる千歳を見つめている直人には、ある悩みが浮かんでいた。

燈にもう二度と会うことができないと理解した時、千歳は耐えられるんだろうか?人生の中で最も身近であるはずの存在がいなくなるって事は、幼いこの子にどれだけの圧をかけるんだろうか?

同時に、今すぐに悲しませないように成長するまで完全に理解をさせないで誤魔化すかという考えもあった。

しかし上手く誤魔化せても悲しむ時を伸ばすだけの事にすぎない。

直人はベンチに座ったまま項垂れた。すると突然、辺りが真っ暗になった。

「あれ?」

直人は顔を上げるとそこは病院ではなく、全く別の場所にいた。

立ち上がり、辺りを見渡すと、暗いその場所には道だけが見えて目の前で分かれ道になっていた。その分かれ道の真ん中には直人以外にもう一人いる。

直人は突如出現したその空間に混乱気味になりながらも、目の前に立っているその人物に声を掛けようと近づいた。

「あの…」

声をかけた瞬間、直人は言葉を失った。

そこに立っている人物はどう見ても幼い頃の自分だったからだ。

「驚いた?」

おまけに声まで幼い頃の直人にそっくりだった。うる覚えだが。

「オレ…か?」

直人はなんとか落ち着こうと、自分はただ疲れているだけだと思い込んだ。すると少年時代の直人が話しかけてきた。

「なぁ。今、ちとせに本当の事を教えるか誤魔化すかで迷いがあるんでしょう?」

正に今考えていた事を言ってきた。

「ああ。けど、ちとせも死って何なのかを、薄々気づいていると思うんだ。ここで変に誤魔化して、もっと悪い思いなんかして欲しく無いからな」

幻覚なのに何をまともに答えてんだと思いながらも、正直な気持ちを発した。

「本当にそれで良いの?それでちとせは、かなりのショックを受けるはずだよ」

「かもな…」

「完全に事実を隠し切る事なんて出来ない。でもせめて成長するまで傷付かないように助けてあげるのが大人じゃないかな?」

「助ける?教えないことが?」

「誰にだって今は知らない方が良かったと思うことがある。あの年の子供なら尚更のことだと思うよ」

この時、直人は少年時代の直人に少し腹を立てながらも、はっきりと自分の考えを通すことに決意を固めていた。

「子供に本当の事を知る権利が無いなんて、誰が決めたんだよ。どれだけ傷付くかなんてちとせ以外が決められるわけねぇだろ」

少年時代の直人は真顔からにやけ面になると右の道を誘導するように片腕を軽く広げた。

「んー…。お好きにどーぞ。後悔するのは自分だけどね」

直人は何も返さず、その道を進んだ。

「なおー」

千歳の声を聞いた瞬間、すっと周りの景色が元に戻った。

「ん?どうした」

千歳は項垂れていた直人に心配しているような眼差しを見せた。

「はんぶん飲む?」

直人は千歳が半分ほど飲んだ缶ジュースを受け取ると、残りを一気に飲み干した。

「よっしゃ!眠くなくなったぞ。ちとせはお母さんに似て優しいな」

「ご飯前にジュースはダメだって思い出したから」

「…。ああ、やっぱり燈そっくりだ。さっさと帰って夕飯食おうぜ」

翌朝、病院から直人に連絡が行き、病院へ駆けつけた。覚悟はしていたが、直人が病室に着いてから、そのわずかな時間を最後に燈は幸せそうな顔を見せながら次の世界へと先立って行った。

その後は直人が予想していた様に、千歳は一日中泣き続けていた。それから何日も表情は暗いまま、なんとか辛い気持ちを押し殺している千歳が少し落ち着きを見せ始めた時に、直人は切り出した。

「ちとせ…。お母さんとの約束、覚えているか?」

「…」

「どんなに辛いことがあっても、それに負けないように笑ってくれって言ってたよな」

「うん…」

「ずっと泣いてると、お母さんも悲しむぞ」

「うん…」

「ちとせー」

直人は千歳の顔を覗き込むと、燈に見せたように必死に変顔をした。

「涙止まんなくて、めちゃくちゃ辛い時はこの顔を思い出して笑ってくれ」

「…」

「ずっと前、お母さんが泣いてた時に同じことをしたんだよ」

「…うん」

「会えなくたって、お母さんはずっと見守ってるから…。ほらっ、笑ってみ」

千歳は直人をぎゅっと抱きしめ、少しつづ笑顔を取り戻し始めた。

この数日間、直人も必死で気持ちの整理をしていた。この先、千歳と二人で生きて行く事に対して自分を変えていかないといけない意識を強く持っていたが、その"自分を変える"というのは直人にとって最も難しい事になる。

心に空いた穴なんて、そう簡単には塞げない。でもその心は少しづつでも治すことはできる。誰が千歳を守る?それに応えられるように、一人の人生を全力で守ってやるのが親じゃないのか。じゃないと燈に顔向けできないだろ?

直人にとって、その一歩の答えが"笑い"だった。

「なぁちとせ。これは前にお母さんと話し合ったんだけどな。お母さんのお墓はおじいちゃん達が暮らしている方じゃん。いつでもお母さんの近くに居れるように、向こうで暮らそうと思うんだけど。どう?」

「…ひっこすの?」

「まあな。そういや、ちとせはまだ行ったことがないけど、向こうには俺の方のおじいちゃんが建てた別荘があるんだよ。そこに住まわせてもらおうかなって」

「おじいちゃんの別荘に!?」

「そう。前に少しの間だけ親戚が住んでいたみたいだけど、今は使ってないみたいだし」

「そこいってみたい!」

「よし。決まりだな」

「大きい家?」

「うーん。まあまあかな。でも2人で暮らすには十分な大きさだよ」

「でも、そこってわたしと同じくらいの子はいるのかなぁ?」

「あぁ。たしかに田舎だけど、まだ小学校があるくらいだから、近くに同い年の子が何人もいるかもしれないな」

「へぇー」

「たしか…。その近くに住んでる俺の友達の娘が、ちとせと同い年だった気がするな」

「ほんとに?」

「向こうに行ったら挨拶に行こうな」

「うん!」

こうして二人は直人と燈が生まれ育った田舎町に引っ越す事になった。

今は千歳にとって、良い選択なのかはわからない。でも自分と燈が逆の状況だったとしたら、燈も同じ提案をしてきたかもしれない。そう思った上での決断だった。

「一度、三人で行きたかったなぁ…」

夫婦で話し合った時、燈がそう言っていたのを直人は思い出し、自然と涙がこみ上げてきた。

「なお、泣いてるの?」

「ん?汗だよ汗」

「ウソばっかー」

それから一週間を過ぎた引っ越し当日。車に積む荷物以外、家具などを全て引っ越し屋のトラックに積み込むと直人と千歳は部屋の隅々まで掃除をした。

家具を配置されていない、がらんとした部屋を見つめながら二人はその部屋とのお別れをした。

「さて、この部屋ともお別れだな…」

「もうここには帰ってこないの?」

「ああ。こっちに帰って来るのは難しくなるな」

「こっちで思い出たくさんできたよね…」

「そうだな…。でも向こうでは、もっと何倍も思い出を作って…それでお母さんをびっくりさせてやろうな」

「うん!」

「よし。じゃあ、とりあえずの荷物だけ車に積むか」

部屋を後にした二人は、車で引っ越し先へと出発した。

「何時につくかなぁー?」

直人は車のナビを操作しながら「おじいちゃん家へ行くのと同じくらい」と返した。

長い道のりになると知った千歳は、この間燈に買ってもらった携帯ゲームの電源を入れた。

高速道路をしばらく走った頃。いつの間にか千歳は手に持っていた携帯ゲームをやめると、移り変わる景色を眺めたり、隣を走る車の人に手を振ったりしていた。

長時間、車を走らせた直人はサービスエリアへと車を停めた。

「あれ?ついたの?」

「いや、ここは休憩する所だ。って事できゅーけーい」

「ごはんたべるの?」

「そうだな。ここで食うか」

二人は車を降りてフードコートへ向かったが。

「うわっ、混んでるな」

フードコートは満席で、席を待っている人さえいた。

「どうするか。もう少しだし、高速降りてから何か食べるか?」

「そーする」

再び車を走らせ、次第に景色はトンネルの続く山々に囲まれた所へとやってきた。

「ちとせー、見てみろー」

「おぉー!」

そこで二人が見たのは、山頂にまだ雪が残っている巨大な山だった。

「今日は綺麗に見えるなぁ」

「ふじさん!ふじさん?」

「…。富士山は逆方向だ。これは磐梯山だ」

「へぇー。しらなー」

「来年の冬にでも一緒にスキーに行くか」

「えぇ…」

「なんだ、嫌なのか?」

「だって、スキーってむずかしそうじゃん」

「俺がいくらでも教えてやるよ」

「なおってすべれるのー?」

「まあまあ」

それから高速道路を降りた頃には日がほとんど沈んでいた。一般道に入るとすぐに踏切で停止した。

「なおー!でんしゃが2台で走ってるよ!混まないかなぁ?」

「こっちは電車を使う人があんまりいないからな。2両で十分なんだろう」

「わたしが行く学校もあの電車で行くの?」

「あー、どうだろ。中学とかは乗るかもしれないけど、小学校は歩いて行くはずだよ」

踏切を通過し、周りの景色が田畑から古民家が立ち並ぶ町に差し掛かった。

「なあ、ちとせ。俺はもう腹がスーパーヘリタシスだから運転できん!」

「ハンバーグがたべたい!あとシャケ!」

「おし、じゃあハンバーグの美味しいところに直行!シャケはないけど」

直人が車を停めたそのレストランは、外に大きな赤い牛のオブジェがあった。

「なんだこれ?」

「ああ、ちとせは見るの初めてか。これは赤ベコっていう牛なんだよ」

「なにハンバーグがあるかな〜」

「人の話聞いてるか?」

二人は店に入りメニューを開いた。千歳は見てるのか見てないのかページを適当にめくっていた。

「決めたか?」

「んー、オススメは?」

「一番最初のページにでっかく載ってる…これはどう?」

「これにする」

オーダーをしてから、千歳はしばらく店内をキョロキョロ見渡していた。

「なおー。さっきいた赤いのがあそこにもいるし、絵もあるよ」

確かに店内のあちこちに赤ベコの絵があったり、小さな置物もあった。

「懐かしいなぁ。俺がちとせぐらいの頃に赤ベコを作ったことがあるんだよ」

「あんなでっかいの?」

「いや、手に乗るくらいの大きさなんだけど。こう、筆で周りに模様を描いたりして、わざとしっぽをくるくるに描いてみたり」

「わたしもほしい」

「近くのお土産屋なら、いくらでも売ってるよ。でっかいのがいいか?」

千歳は首を横に振った。

「自分で作りたい」

「そっかぁ。俺が赤ベコを作ったのは、夏にあったイベントに行って作ったんだよ。今もやってるのかなぁ」

そんな話をしている内に二人の料理が運ばれて来た。

「いただきまーす!」

千歳はハンバーグのソースを口に付けながら、この日一番の笑顔を見せた。

それを見た直人は急に手を止めて「なぁ、ちとせ…」

千歳は手を休めることもなく「ん?」と反応した。

「…。いや…ハンバーグ美味いか?」

千歳は食べる手を止めずにコクっと頷いた。

夕飯を食べ終わり、店を出ると辺りは真っ暗だった。

「くらっ!」

「田舎だからなぁ。あんまり建物も無いし、車もそれほど走ってないし」

そう話しながら二人は車に乗った。

「あっ、そうだ。明日の朝ごはん買ってなかったな」

「いつものシャケとみそスープ!」

「あっ、わりぃ。向こうの冷蔵庫とか調理器具とかは引き取ってもらってんだった。明日、引っ越しのトラックが来るまではパンとかで我慢してくれ」

「えー。わかった」

「とりあえず、そこのコンビニで買おう」

「コンビニあるんだ」

「今ってどこにでもあるよな。もう少し行けばスーパーもあるし」

「ハイパーは?」

「ハイパーもウルトラも無いよ。多分」

朝食用のパンを買ってからは真っ直ぐと新居へ向かった。その数分の間に千歳はコンビニの袋を抱えたまま眠気と格闘を始め、着いたのは8時半を回った頃だった。

「ちとせ。着いたぞ」

千歳は閉じていた目をゆっくりと開いた。

「ここが今日からオレらの家だぞ」

「まえの家はどうなったの?」

「売った」

「もっったえな!」

もともとスペアキーとして渡されていた鍵で玄関を開け、ストッパーで開いたまま固定した。

「ちとせー。荷物降ろすぞー」

2、3日分の着替えや洗面道具などを二人で手分けして玄関へと運んだ。

「ちとせ。見てろよ」

「ん?」

直人は先にブレーカーのスイッチを入れて来ると、玄関から直ぐのリビングのスイッチを押し、真っ暗だった部屋に明かりを灯した。

「わぁー!」

そのリビングは千歳が想像していたよりも洒落ていて、カウンターキッチンも有れば、外のウッドデッキに繋がる大きな出窓もある。そして奥の横開きの扉の向こうには和室があった。

「あと一階にはトイレと洗面所と風呂場だ。二階もあるぞ」

「二階も!」

直人は頷くと、指を上に指した。

「見てごらん」

それは千歳の眠気をも吹っ飛ばす光景だった。

今二人が立っているリビングと二階の廊下が吹き抜けになっていたのだ。

「すっっげえ!」

「だろ?」

更に天井にはライト付きのシーリングファンが設置されていた。

千歳はそのシーリングファンを指差すと「でっかいせんぷうき!」と言った。

「ほら、スイッチを入れると。速く回ったり、ゆっくり回したりもできる」

「おー!…でもかぜが来ないよ?」

「扇風機じゃないからな」

「かざりのせんぷうき?」

「んー…。知らん!」

「おとななのにしらないの〜?」

「大人だからこそ、なぁ、知らない事だってあるんだよ」

「なにそれ」

「わかった、わぁーた。ほれほれ、和室に来てごらん」

「これって」

「畳だ。出窓の内側も障子戸だぞ。」

「まえの家にはなかったよね。」

「そうだな。これでおじいちゃんちと同じだな」

そう言うと、直人は押入れの襖を開けて二人分の布団を出した。

「どうだ?俺らがここに住むって聞いて、おばあちゃんが新しく買ってくれたんだぞ」

「わたしのふとんかわいい!」

「おばあちゃんはホントちとせの好みわかってるよな」

あらかじめ用意されていた枕にカバーをつけたりして、二人は布団を敷き終えた。

 「よっしゃ。明日は大掃除だな。荷物が届く前に早起きして掃除すんぞ」

「またそうじー!?」

「だって荷物届いてからだと掃除しにくいだろ?」

「そっかぁ。あたまいいね!」

「…。ありがとうございます」

直人は風呂場の方に向かった。

「寝る前に風呂だけでも入ろうぜ」

「はいろーぜ」

「ちゃちゃっと風呂掃除するから、その間にシャンプーとか降ろした荷物から取ってきて」

「イエッ、サー」

二人は風呂に入ると持って来たドライヤーで髪を乾かした。

「ねぇ、二階に行っていい?」

「二階は明日のお楽しみだ」

「えー」

「ほらっ、良い子は歯磨きして早く寝ないと怖いの来んぞ。悪い子はいいけど」

「はーい」

直人は千歳の歯を磨いてあげると、二人は敷いた布団に横になって、明かりを消した。

「明日は色々買いに行くから…。ちとせ、荷物持ってくれよな」

「…なおー」

「ん?」

「わたしね、もうすぐ小学生でしょ。」

「おん」

「あのね、だからランドセル買うって言ってたでしょ?」

「ああ、そうだったな…。考えとくよ。おやすみんみんぜみー」

「…おやすみなさーい。」

それから2時間ほど経過した頃だろうか。それまで眠りについていた直人がゆっくりと目を開けた。

窓と障子戸に当たった月明かりがわずかに部屋を照らしていた。

直人はもう一度寝ようと目を閉じ始めたが、ある違和感を感じ、その違和感の正体は直ぐにわかった。部屋の一部だけ月明かりがよく当たっていたのだ。それもちょうど直人の顔が当たる部分。

障子戸が少し開いているのだと気づくと、直人は軽く布団から体を出し、自分の頭側にある障子戸を閉めた。

そのままチラッと千歳の寝顔を見ると、また眠りにつこうと目を閉じた。が、また何やら違和感を覚え、直人はゆっくりと目を開けた。

目を開けた直人の瞳に映っていたのは、頭側から反対向きにじっと直人を覗き込むように見ている人の影があった。



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ループ


 このブログについての注意事項。

 1.食べられません。(本当に食べれる人を除く)

 2.違う意味で目に入れないでください。

 3.高温多湿を避け、なるべく涼しい所でお読みください。




 人が疑問を持つとき、答えを知りたいから疑問を持つのだろう。

 本当に恐竜は隕石で絶滅したのだろうか?書物に書かれているというだけで、本当に歴史はそうだったのか?

 正解、不正解、正しい、間違っているなんていうのは人が勝手に作ったわけでもある。

 しかしそこに疑問ばかり有ってしまうと、答えを知った時に更なる疑問が生じないとは限らない。


 疑問→答え→疑問→答えと。

 むかしむかしあるところにお爺さんとお婆さんがいました。お爺さんが言いました。
「ばあさんや。こんな話を知っているか?むかしむかしあるところにお爺さんとお婆さんがいました。お爺さんが言いました。
「ばあさんや。こんな話を知っているか?むかしむかしあるところにお爺さんとお婆さんがいました。お爺さんが言いました。
「ばあさんや

 …誰か止めてくれていいんだ。


 そう、 確かに答えを知らなければアレコレと想像ができるが、大きな問題ほど答えを知った時に「本当か?」と思われるだろう。

 結局、更なる疑問でループとね。


 話を元に戻そう。


 また疑問を別の意味で言うと、疑いとなる。どちらにせよ答えを知りたいというのに変わりは無いけどね。

 例えば、ニュートンは林檎が木から落ちるのを見て万有引力を発見したと言う話は有名だから知っているだろう。
 ニュートンは林檎がなぜ下に落ちるのかと疑問を持ったから万有引力が働いているという答えに辿り着いた。
 そもそもその話自体、本当かという疑問もあるが。

 本当はどうなんだろうって考える事は毎日の様に、数え切れない程。


 つまり、何が言いたいのかというと…

 人が疑問を持つとき、答えを知りたいから疑問を持つのだろう。

 本当に恐竜は…

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 はい。それじゃあいつものクイズ。

 前回の答えは②のボルボでした。


 デケデン!問題。
 車の王様と言われるロールス ロイス。このメーカーの車は大型のラジエーターグリルが特徴的だけど、何をモチーフにしているでしょうか?

 ②バッキンガム宮殿
 ④俺の家





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日記

 俺の車か?欲しけりゃくれてやる。

探せ!全ての車をそこに置いてきた。




 このブログについての注意事項


 1.違う意味で目に入れないでください。


 2.読み終わったらポイ捨てせず、リサイクルボックスに放り込んでください。


 3.高温や多湿を避け、なるべく涼しい所でお読みください。




 こんにちワトソン。

 7月がやって来ました。ターナバーターや月末頃から夏休みといろいろある月。


 今日は特に面白い話をする訳ではなく、車や筋トレの話をする訳でもありません。


 話したい話題は山ほどあって、…時間が無いか、大変なだけか、タコスか。


 本格的に病院での実習が始まる訳で、同時に定期試験も近い。なので筋トレの時間を削らなければいけないのは厳しい。


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 話が135度変わりますが、スイカを食べました🍉

 もう夏だからね。


 当たり前だけど、気温も上がるからより過ごしにくくなって寝苦しい日もあるはず。

 俺はそんな夏、寝間着を甚平にしてます。これが意外と涼しい。(あくまで個人の意見)


 今年の夏はクーラーに頼りすぎず、扇風機とか使って凄く暑い夏から"凄く"を引いて、暑い夏を満喫したい。

 良い夏を過ごせると良いな🙂


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 試験が全部終わり次第また更新していけたらなと。

 夏休みに前々から考えていた物語でも久しぶりに作ってみようかなと思ってます。←気が変わらなければ


 その物語で何かを察してもらえればなと。




 そんなところです。


 

 NAOクイズ。

 前回の答えは②でした。


 今回は問題無しで。それじゃあまた。

 


 

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Enjoy Driving

 うごメモはてなが終了してから4年も経つんだね。当時は高校生でした。


  このブログを読むにあたっての注意事項。


 1.食べられません。


 2.違う意味で目に入れないでください。


 3.高温湿気を避け、なるべく涼しい所でブログを書いていきたい。




 こんにちワンタン麺。ご無沙汰してましたNAOです。

 なぜか昨日投稿したはずの記事が消えてるので、また新しく投稿します。多分、不具合か何かでしょう。



 ちなみに昨日投稿した話は、世界中の自動車メーカーを(創立者とは関係無く)擬人化したギャグ風な話でした。また作り直そうと思ってます。




 さて今日は何の話をしようかな。((考えてないんかい👊🏻


 学校の事とか話したいけど、医療って外部に知られるといけない情報が多いので下手に話せなくてね。

 健康の事とか、あまり知られてない事などはまたの機会にいろいろ載せていきたいとは思ってます。


 因みに、ネットに載っている医療に関する情報が全て事実では無いので気を付けて下さい。


 

 さてこれはちょっと前の話。


 フォルツァモータースポーツの様々な大会で活躍している人達をゲストに招いて、グランツーリスモ6内でドライビングテクニックの攻略をしました。

 ハンドルコントローラー付きなので、ちょっと本格的なドライビングスクール的な感じに🚗


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 タイムを縮めるにはどう走ったら良いか、またドリフトが上手くできる様になるにはどうしたら良いかなどインストラクターとなっての攻略。


 逆にフォルツァでの走り方も彼らにコツを伝授してもらいながらサーキットを攻めました。



 彼らとは以前、現実のサーキットでも会っていたりオフ会でもあったことがあるが、このように互いが普段プレイしているレースゲームでの違いを検証したのは初めて。

 車のセッティングの違いなど、興味深いデータが取れたと思います。



 今年でグランツーリスモ内で個人らが主催する大会への参加は最後の挑戦ですが、今回の経験も活かせると良いなと。


 ただ、完璧なレースができたことがあるとは思わないけど、その瞬間は気合を入れて楽しんでいる。



 俺はただ、運転するのが好きなだけであって特別な思いなんかは無いかな。純粋に。

 


 f:id:dorifuto-naoki:20170602212333j:plain



 あまり派手な車は市街地で乗りたいとは思わないし、かと言って面白く無い車もつまらない。

 ただ、今までいろんな凄い車に乗ってきたけどこれだけは言える。


 どんな車に乗るかじゃなく、どんな運転をするかだと。


 

 それに好きな車に乗っているというのをプラスできれば、それだけで素晴らしいと思う。

 もし皆さんも車に興味があったら、胸を張って愛車と言える関係に🙂

 

 


 俺も自動車免許を取得できる歳になってから間もない若葉ですが、そんな車を見つけられたらなと。




 (ただ、公道では飛ばさないようにしましょう。公道でカッコつけたような運転をしてもみっともないぜ)



 ……で昨日投稿しようとしていた話とは違って、あんまり面白くない話だったかな。


 通学中の電車の中でぱぱっと作ったので何を伝えたいんだって文かも。




 えー、という訳でいつものNAOクイズ。


 前回の答えは①でした。


 

 デデン問題。

 3点式シートベルトやエアバッグなどを初めて開発した自動車メーカーはどれ?


 ①スバル ②ボルボアストンマーティン


 答えはCMの後…じゃなくて次回。




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 「君の名は」を会津弁で言うと、「おめ、だんじゃ」になる。